NHKスペシャル マネー資本主義 第4回「金融工学」

NHKスペシャル|マネー資本主義 第4回 ウォール街の“モンスター” 金融工学はなぜ暴走したのか
素晴らしい番組。
デリバティブ証券化CDS。各金融工学を開発した当事者 3名が、直接、わかりやすく、なにを発明したのか、なにが理解されなかったのか、なぜ暴走したのか、これからどうするのか、それぞれに語りかけてくれる。


どんな技術も、意味と使命があって生み出される。
どの金融技術にも、意義があるし、これからも活用される。
保険会社で引き受け不能な、大規模天災さえも、証券化の技術を使えば、世界中の投資家にリスク分散して、保険に出来る。
阪神大震災や、ハリケーン・カトリーヌの被害者は、運が悪かった・・・で済まされないような社会になりうる。


と同時に、
”リスク””意義””前提条件”をきちんと捕まえず、”利潤”の額面だけを追いかけてしまうと、破局へと突き進む。
どんな技術も、そう。
そして、技術が高度化すればするほど、額面だけを追いかけやすくなる。本質を見据えるには、しっかりとした見識が必要となる。


3名、それぞれの人生。
CDSの開発者(とても素敵な女性)が所属していたJPモルガンは、住宅サブプライムローンCDS化は、リスク計算が困難なことをきちんと踏まえ、1度試行しただけで撤退した。だから、今回の危機で、傷が浅かった。「モンスターを生み出したのかも」と語りつつも、暖かい仕事仲間に囲まれ、自信と確信に満ちた仕事振りのように、僕は感じた。独立してコンサルティング会社を起こし、”CDSのリスク”を格付けに頼らず判断する術を、広く伝えようとしている。
証券化の開発者は、かつて、次男の出産費用が払えないため、数学の研究者からウォール街へ転進。住宅を持てなかったひとたちの夢を叶えた・・・というやりがいを感じていた分、加熱と崩壊に対する罪の意識が大きいように感じた。いま、2つのことを追求している。ひとつは、ひとの研究。儲けが続いたときリスク判断がどう偏ってしまうのかを研究し、それをリスク計算に織り込もうとしている。もうひとつは、大規模災害被害をカバーする保険の開発。金融工学があってこそ可能な、社会貢献だし、これは僕の推測だけれど、自然相手なので、リスクの急激な変動で前提条件が狂うことが起き難く、証券化にむいているのではないか。
デリバティブの開発者は、開発に10年間使ったパソコンを、懐かしくいとおしむと同時に、今は牡蠣の養殖を生業としている。ウォール街に戻る気はないと。収入は減ったでしょう?・・・「比べ物にならないよ。だが、生きていくには十分だ。」海に飛び込んで泥のついたTシャツで微笑む、その幸せそうな顔。