顧客とメーカーのズレを、価値にする

航空会社と我々では鏡を使う目的が違ったんです。『忘れ物防止ミラー』として売り込んだのですが、採用してくれた欧州の航空会社が当社のミラーを買った理由は、『ボム(爆弾)チェック』の時間短縮だったんです。乗客ではなく客室乗務員の作業効率アップが目的だった。我々メーカーには想像もつかない新たな鏡の活用法でしたね

店舗ディスプレイ用に面白いかなと思って展示会に出してみたんです。そうしたら意外にも30個まとめて買ってくれたバラエティショップがあって、こんな数を何に使うのかなと思い、後日聞きに行ってみたんです。すると、万引き防止用に使っているというじゃないですか。正直、想像もしてなかったですね。この体験がコミーの経営スタイルの原点になっています

メーカーの意図した用途と実際のユーザーの使い方・感じ方は異なる。このことを私は“作り手の誤解”と呼んでいます。たとえば銀行ATM用の後方確認ミラーについても、多くの人が、マジックミラーになっていて顔を撮影されていると勘違いして不快に感じていたんです。思ってもみませんでした。ですから最近では、ミラーに使用目的を明示するようにしています。このようにして誤解を解消していくことで、製品の改良や新製品の開発につながるのです

コミーのモットーは「10年、20年、お客さまのお役に立つ商品をつくること」。ユーザーの役に立っていなければ、たとえいくら売れていてもお客さまを騙していることになると小宮山社長はいいます。

この姿勢があるから、ズレを発見し、価値につなげられるんだろうなぁ。