余録:「コンコルドの誤り」

 あるオスの鳥が一羽のメスを気に入って、せっせとエサを貢ぐ。ところがメスは相手にしてくれない。オスはそのまま求愛を続けるかどうか? それまで求愛につぎ込んだエサや労力が無駄になるとバカらしいので求愛を続けるだろうという見方がある▲行動生態学ではこうした見方を「コンコルドの誤り」という(長谷川眞理子著「科学の目 科学のこころ」岩波新書)。英仏共同開発の超音速旅客機コンコルドの開発途中で採算が合わないと分かったが、それまでに費やした巨費が無駄になるとして開発が進められたことになぞらえた言葉だ▲実際の動物の行動は過去の投資の大きさにかかわりなく、将来の見通しと現在の選択肢によって決まるように進化してきたという。「コンコルドの誤り」とは人間の発想を動物の行動にあてはめる誤りを指すものだ▲長谷川さんはウェーゲナーの大陸移動説が提唱されたころ「そんな考え方が許されるのなら、われわれの過去数十年の研究はどうなるのか」と反対した大物地質学者の話も紹介している。どうも「過去の誤り」の上塗りに走るのが人の常らしい

動物のほうが、人間よりずっと賢いよなぁ・・・って想うことは、しばしばある。
記憶。益も大きいけど、害も大きいよなぁ。