TDR三昧下書き TDS版ファンタズミック!感想

ファンタズミック! 今日は絶好の天候。現時点の完成版を観ることができたのだろうと想う。
でも、まったく感動しなかった。目が潤みさえもしなかった。フィルハーマジックなんて、あんなに笑いを取りに行っていて、でもしっかり涙がこぼれるのに。
僕だけではない。
観終えた後のお客さん、口では「良かったね」「凄かったね」と言っている。たぶんアンケートを求められたら「素晴らしかった」と書くだろう。でも、表情が素どころか、不機嫌なのだ!少なく見積もっても数百人のゲストとすれ違ったけれど、心から楽しげな顔してたのは、要塞側から見たらしい若い女の子二人組だけだった。
好対照なのが、日曜に観たナイトフォール・グロウ。口では「え、これだけ」「短かっ!」。なのに表情は、9割以上がにっこにこ。


このショーを気に入って居られるかたや、大金はたいたOLCさんには申し訳ないんだけれど、断言させてもらう。
これは失敗作だ。
アメリカ版と比較して・ではない。先入観なくひとつのショーとして評価したいから、未だにアナハイム版もフロリダ版も、動画さえ観てないのだ。


隅田川花火大会並みには派手で凄い。だから、観て損はないよとはお薦めする。TDS版スターライトドリームスだね・どこで失敗しているかは違うけれど。
スターライトドリームスが、全部載せキャッスルショーだったように、
TDSファンタズミック!も、全部載せ水上ショー。ディズニーシーの過去のショーのいろんな要素を、全部盛り込んでるのは同じ。ただし、スターライトドリームスの失敗に学んだのだろう、過去ショーの体感記憶を呼び起こすほど似せては居ない。


TDSファンタズミック!の、なにが駄目なのか。
「これなら、オリジナルの映画観たほうがいいじゃん」なのだ、ほとんどのシーンが。
フィルハーマジックで、なぜ涙が出るのか。オリジナル映画のエッセンスを、新しい技術で、より深く表現してるからだ。アリエルのグロットのシーンしかり、アラジンの魔法の絨毯しかり、ピーターパンしかり。
ワンマンズドリームも「おぉ、あのシーンを、生身の人間が目の前で!」ディズニー映画を再現したライドアトラクションも「身体ごと映画のシーンに入り込む!」映画と違う技術で、違う深さで体験するから、面白い。
でも、ファンタズミック!に於いては、魔法使いの弟子と、魔法の鏡&ドラゴンくらいかなぁ、あの場でみるからこその良さが感じられるのは。荒くて鮮やかすぎるLEDアレイ。ぼやっとしてるくせに形状はうつろわないバルーンスクリーン。これにただいろんな映画を投影されたってなぁ・・・。


力は尽くしていると想う。出演者も、技術者も、演出も。
あの空間でファンタズミック!を成立させるための道具立てを、懸命に考えて用意し、
「今の時代にまだ、勧善懲悪かよ」なコンセプトを、なんとか妥協できるところまで修正し。
音楽の継ぎはぎは見事だと想う。このところふと気づけば、イマジネーションからファンタズミックのメインテーマへ移行する部分が、脳内ループしてたりすること、しばしば。
巨大ソーサラーハットの、星雲は実に美しい。
出演者の熱演っぷりは、あんなに離れてても伝わってくる。


失敗の真因は、なにか。
ほかのショーを提案されたのに、「いや、ファンタズミック!を」とゴリ押ししたことではなかろうか。


TDL25周年のとき、白雪姫とピノキオを、映画館のスクリーンで観ることができた。
どちらも始まった瞬間、「なんじゃこれは!」と叫びたくなるほどのインパクトが津波のように押し寄せてきて、涙が滝のようにあふれた。
あの異様な迫力は、言葉にできない。それを、あえて言葉にするなら”創り手の情熱”だったんだと想う。”これこそが、いま、世に問うべき作品だ”というような。”世界を変えてやる”級かも。


でも、TDSファンタズミック!に、この種の迫力を感じない。
「やれと言われて引き受けた以上は、ベストは尽くすけどさぁ・・・」という声が、聞こえてくるように感じてしまう。
あ、それはスターライトドリームスもだ。
「いま、こういうショーを創りたいんだよねぇ!」とワクワクしながら創ったのではなく、「営業政策的にこういうのが人気出るはずなんだよね」、みたいな。


鑑賞眼がある人はみな失敗作と断言するレベルだぜ・・・と僕は感じる。
ところが、鑑賞眼があるひとびとが、感動してる。
それ、もしかしたら、アメリカ版ファンタズミック!をご覧になってるからじゃなかろうか。
TDS版で酷い出来な部分を、アメリカ版の描写を思い浮かべることで補完してるからじゃなかろうか。
単体でありのまま見ると、このショー、かなりひどい出来栄えだと想うんだけれど・・・。


それとも僕の感受性が鈍ってしまっているのかなぁ。
もはや、ドリームライツでも、ワンマンズドリームIIの飛翔でも、じーんとは来なくなっちゃってるもんなぁ。