壊れることへの対処、壊されることへの対処。

日本車は故障しにくい。食べ物の不良率だって、アメリカよりもひと桁以上低かったりする。
でも・・・
めったに起きないトラブルを防ぐのは、苦手かもしれない。病原性大腸菌への対応しかり、鳥インフルエンザ対策しかり。アメリカのほうが、ずっとシステマティックにコンスタントに、持続的対応をしている。


その一因が、ここにあるのかもしれない・と、朝刊のコラムを観て想った。

 グーグルのニュース検索に「原子炉 津波で壊される」と入力したが、反応がなかった。「原子炉 津波で壊れる」と入れると多くのニュースがヒットした。日本人の思考回路では、原子炉が「壊れた」と自動詞を使う。

 英語ニュースを検索すると、「ダメージ」(壊す)という他動詞を受け身にして「壊された」と表現している。

日本人は、壊れないように改良する。どんどん改良を積み重ねる。
でも、壊されないように設計する・という観点は、とても弱いのかもしれないなぁ。


現に発生している不具合を、原因を突き止め、対策を打ち、再発防止するのは、得意。
それは、天災にしょっちゅう遭遇することとも、もしかしたら関連しているかもしれない。


一方で、「いつ来るかわからない、過去未体験の災いにまで気を配ってたんじゃぁ、生活できないや!」・・・みたいなけつのまくりようが、こころの根っこにあるのかもしれない。
これまでに起きたことに対して誠実に最善の対応をし、それを超えたら、天命と想ってあきらめる・みたいな。
うん、西日本は台風しょっちゅう来るわけだけれど、その対応を思い浮かべてみれば、そんな感じだ。


 米国人は事故を「起こす」という他動詞で考える。かつて米政府がハッカーを集めて実験をした。ある町の火力発電所と消防局のコンピューターに外部から侵入してプログラムを壊せるかどうか。結果は、インターネットを使って発電所に火事を起こし、火災報知システムを故障させることは可能だった。

 9・11同時多発テロが起きたのは、雑誌にこの論文が出た直後だった。米国のブッシュ政権は「テロとの戦い」を始めた。そのなかで原発の非常用電源設備を見直し、安全性を高める措置をとった。テロリストが事故を起こすと考えたのである。

 オバマ政権も昨年4月、核安全保障サミットを開いた。テロから核関連施設を防衛する対策が世界の首脳の共通議題となった。

 この会議で当時の鳩山由紀夫首相がどういう発言をしたか記憶がない。この時に、日本も非常用電源の安全強化をしていたら、結果的にテロならぬ津波の襲撃に効果的な対応ができただろう。

毎日新聞 2011年5月19日 東京朝刊