「好きなことを徹底的にやること」の大切さ

糸井 たったひとつの価値を作り出したとしたら、
それは「芸術」ですよね。


同じものを100個作ったら「作品」くらいになる。
1000個作ったら、まあ「大事なもの」くらい?


でも、テクノロジーが発達して
モノを大量生産できるようになっていったら、
みんな、そっちへ向かっていった。


原 おもしろくも何ともないよね。


糸井 そう、そうなんです。おもしろくない。

原 そういう仕事を
ビジネスの文脈で「どう考えるか」は
たしかに興味深いですよね。


でも、それに対しての答えには
やっぱり、文化の問題が関わってくると思う。

原 わたしの父は、
鉄道模型に時間もお金もエネルギーも、
すべて、注いできたんです。


糸井 ええ、しかもどれも、膨大な(笑)。


鉄道模型って、興味のない人からすると
財産的に無価値な「オモチャ」ですから、
「同じ投資をするなら、こんな機関車の代わりに
 絵でも集めてたらよかったのに」なんて、
よくね、言われるんですよ。


糸井 儲かったのに‥‥ってことですよね。


原 でもね、やっぱり、そういうことじゃない。


鉄道模型に対する父の姿からは
「好きなことを徹底的にやること」の大切さを
学ぶことができたと思ってるんです。


そういう経験からすると、
ここをショートカットすれば最短距離だとか、
こうしたら、簡単に儲かるなんて考えかたで
仕事をやっても‥‥
あんまり、いいことはないだろうなって思う。

糸井 そう思いますか。


原 だから、ベンチャーキャピタリストとして
「会社をつくる」という仕事も、
「お金儲けの手段」として取り組んだことは
いちどもないんですよ、ほんとに。


糸井 ほう。


原 きれいごとを言っているわけではなくて、
それよりも、
わたしが「あったらいいな」と思う技術を
実現させたい。


そして、そういう情熱で取り組んだほうが、
結果として、
ビジネス的にも、うまくいくんですよね。


糸井 情熱を動機にしてるんですね。

糸井 これまでのお話を聞いていて、
もうひとつ思ったのは、お父さんの「鉄道模型」が
最たるものだと思うんですけれど‥‥
趣味っていうのは、「消費」のかたちをとった
「生産」だと思うんですよ。


原 ああ、なるほど。
それは、実感的にわかります。


糸井 これからの時代は、
そんな「消費」に裏付けられた「生産」が
大切になってくるだろうって
ぼくは今、ことあるごとに言ってるんです。