私をとても穏やかな気持ちにさせてくれた本がある。イタリア在住の作家、シルヴァーノ・アゴスティの書いた「誰もが幸せになる1日3時間しか働かない国」(マガジンハウス)だ。
(中略)
1日3時間しか国民は働かない。それで、十分生活できるからだ。十分リフレッシュして集中して働く国民の生産性は高く、警察とか裁判所とか軍隊のようなところに、無駄なお金がかからないため、政府が提供するサービスの水準も高い。
キルギシアの国民は飢えることがない。1日1回はタダで食事が出来るからだ。罪を犯した人は、刑務所に入るのではなく、いつも黄色い服を着て、なぜ罪を犯したのかを問われるたびに答えなければならない。子供たちはいつも公園で遊んでいるが、周囲には哲学の家とか数学の家など、さまざまな学び舎があり、興味のわいたときにいつでも学べる仕組みになっている。
誰かと愛し合いたい人は、男女を問わず、胸に小さな青い花をつけて恋の相手を探す。人間が生きていくためには優しさと性欲と愛が必要だと著者は言う。「性欲や愛のない優しさは偽善を生む。優しさや愛のない性欲はポルノを生む。性欲や優しさのない愛は神秘主義を生む」
毎日新聞夕刊コラム 晴れても降っても 生き生きと働ける平和な社会 森永卓郎さん