データ改竄

毎日新聞書評欄 「万物の尺度を求めて」ケン・オールダー著  鹿島 茂 評


おどろいた。
永久不変の長さの単位「メートル」を決めるための、7年間の命がけの仕事。
その測定結果に矛盾を発見し、しかしながら再測定は戦争状態のため不可能・・・さぁ、どうするか。


命がけの嘘を、ひとり密かにつく。
そして、より精度の高い追加測定を行って修正しようとし、マラリアで死んでしまう。
彼の死後、パートナーが嘘に気付き、綿密な検証作業をして。でももはや公表できない。


200年後の今、封印されてた検証記録から、この事実を調べたのが本書だという。
・・・ほんとなんだろうか。フィクションだったりして。


フランス革命の時代。
王が決めるのではなく、大自然に基づいた不変の「長さの単位」を求めようとした命がけの努力。
「客観的で公正」を求めて、その実、主義主張の泥合戦となり、たくさんの人々がギロチンにかけられて死んでいった時代。


そうして創られた「メートル原器」や「法体系」。
実は、「客観的で公正」ではなかったにもかかわらず、人類に多大な益をもたらしたとは言えると想う。
「正しい」ことよりも、「実用的に十分」であることこそが、
「正しい」ことよりも、「人類共通の長さの単位を持とう」という強い意思こそが、
意味があった・・・って言えるんじゃなかろうかなぁ。