音楽の素晴らしさ

実は、私にとっても、外山さんたちは人生の恩人なんです。


6年前、父が急逝しました。
そりゃぁもう、ぶったまげました。健康そのもの。そんなことがあろうとは夢想わず。
取り急ぎ各方面に連絡をし、荷物をまとめ。自分が混乱してるから、同じことを何度も繰り返しそうになったり。迷い熊みたいにぐるぐるぐるぐる。でも不思議と最短時間で手際よく段取りがついて。
のぞみ号に飛び乗って。ふぅっと一息ついて。
多摩川を渡るころでしたか。ふっと「あぁ、あの父の息子として生まれてよかった」って想ったんです。
その途端、途方もなく大きな感謝の念が、津波のように押し寄せてきました。
そして次々と、父との想い出が浮かんできて。


「あぁ、父は為すべきことをみな為して、この世を去ったんだなぁ。」って、心の底から想えました。


そう想うことができた理由の一つ。真っ先に浮かんだ想い出が、外山さんたちなんです。
両親を、東京ディズニーランドに招待したことがあるんです。数少ない親孝行の想い出です。
朝から遊んでいた両親と夕方合流して。「どうだった?楽しかった?」
父は眼を輝かせて「うん、バンドが素晴らしかったよ!」
当時プラザ・バンド・スタンドでやってたスイングのショーと、そして、話からしてほぼ間違いなくパーリーバンドに遭遇。
すこぶる効率よく回れたようで、主なアトラクションほとんど全てと、あらかたのショー&パレードを観ることができたようでしたが、まっさきに「バンド」でした。
あとはアトラクションでは「スター・ツアーズ」・・・スターウォーズ大好きでしたから。


この話、OLCさんに手紙を書きませんでしたし、外山さんにお話する機会もありませんでした。
でも、もし父が外山さんたちの演奏に触れていなかったら。あの嬉しそうな顔の想い出がなかったなら。父の死を、こんなふうに受け入れることは、たぶん出来なかった。「姿は消えても、ほんとうに大切なものは、ずっと心に残る」ってことを体得できなかった。僕の人生は、今とは全然違うものになっていたことでしょう。


きっと僕のみならず、こんなレベルで外山さんたちのことを人生の恩人と感じている人、たぁくさん居ると想うんです。
外山さんと中西さんが、今、舞浜に出演されていないということが、僕にとってどんなにさびしいことだか、わかりますでしょうか。


父の愛聴盤は、ジョージ・ルイス・バンドの「オハイオ・ユニオン」。
父が一度、彼らのライブを観た時、ほんとは来るはずだったバンジョー奏者、ローレンス・マレロが、直前で体調を崩して来られなかった。父はそれをとっても残念がっていました。
実は、恵子さんがお使いになっているバンジョーは、ローレンス・マレロが「オハイオ・ユニオン」で使ったまさにその楽器。ついに来日を果たせず亡くなったマレロの代わりに日本へ・・・と未亡人が恵子さんに託されたものなんだそうです。
いつかぜひ、恵子さんの奏でる「世界は夜明けを待っている」を聴いてみたいなぁ・・・。
今夜は、ピアノのバッキングがあってのバンジョー演奏でしたから、あのエッセンスがふんだんに感じられて。「あぁ、まさにあの音だ」って感じる瞬間がたくさんありました。とっても嬉しい夜でした。