練られた工夫

ここで妙なことに気がついた。
トランジットモール」「歩行者専用街区」「民有地と道路の一体利用」。先進的な取り組みは驚嘆とも言えるとの認識は以前から持っていたが、同行者がそれらをあまりに自然にそれを受け入れるという点である。
(中略)
不便とも言わず、迂回にも不思議がらず、歩いていても特別に意識をさせない。いわば「ごく当たり前のシステム」として受け入れているのだ。
オーストラリアのパースでも似たような経験をした。妻と一緒だったが、彼女はバスに乗るのに何のためらいも無かった。海外では、路線バスなどほとんど乗らなかった人なのに。
バスに乗るのに全く躊躇わない。しかも知らない町で。

で、ふと思った。

もしかして、これこそが都市交通・まちづくりのあるべき姿ではないのか・・・
普通にその町を訪問する、あるいは居住する人々に、無意識のうちに利便性や快適性を与えつつ、不便さを感じさせないままに交通政策、都市政策を実施する。

(中略)

今から8年ほど前、北米のある都市のトランジットモールを見たとき、なんともいえぬ違和感を感じた。これがトランジットモールの独特の雰囲気なのか・・・と。交通や都市計画に何の興味もない友人が不思議がっていた。「この雰囲気はなんだ?」と。

今回のケアンズにしろハワイにしろパースにしろ、見ているとまったくそういった「違和感」を感じさせない。トランジットモールもおそらく普通に旅行に来ただけでは単なるバスの道路という認識でしかないし、モールはモールとして感じるが、別に広場というイメージしか感じさせない。しかし、よくよく考えればトランジットモールには一般車が入れないような巧妙な仕掛けがされているし歩行者専用街区も自動車が入れないことに違和感を感じさせない。でも、それを全く意識させないし、その存在があまりに自然。
パースで乗ったバスを彼女は普通にエレベーターのように使っていた。「バスに乗るぞ」などという意識ではない。

よく練られた工夫は、自然にひとをしかるべき使い方に導き、利便性を享受させる。
このレベルまでデザインを練りこめると、スムースに機能するよなぁ。
事業所の施設計画もそうだった。
TDRでも、いろんな局面で、意識せずにしかるべき使い方へと導びかれてる。
もしそうでなかったなら。あれだけ多数の多様なゲストが来場する場所、大混乱かも。


仕事やプロジェクトの進行も、そうだよなぁ。
勤務先の環境マネジメントシステムも、そんなレベルにまで高めなきゃなぁ・・・。