NHKスペシャル「私たちは核兵器を作った」

アメリカは老朽化した核兵器施設の解体と汚染除去を始めた。そして、核兵器工場の労働者たちが口を開き始めている。「アメリカはどう核を作ってきたか」の一端を見つめる。

重厚な番組だった。


登場する核工場の労働者、みなそれぞれ、とても魅力的。アメリカ人の良さを体現しているかのように、暖かく、思いやりがあって、パワフル。
”誰かがこの役割を負わねばならない”と、危険な作業に従事してきた。
守秘義務があるために、妻にさえも”運転手をしている”で通してきた。妻はあえて問い詰めなかった。その絆の深さ。


核工場が閉鎖され、守秘義務から解放され、核工場で働いてきた人々が真実を語り始めた。
放射線被ばく。
当初、グローブボックスはただのステンレス製。
ゴム手袋一枚で、プルトニウムの塊をさわり、加工する。

それは緊張しますよ。手の中に、核兵器を握っているのですから。

やがて、ステンレスの上に鉛で遮蔽。ゴム手袋が鉛入りになったのはずいぶん経ってからだった。
”人体への影響がよくわかっていない”・・・動物実験。そして、工場労働者自身が、被ばく影響の知見を得る対象になった。
東西の激しい競争の下、危険を承知で走りながら、あとづけで危険をふさぐしかなかった・・・のだろうか。


1969年の火災事故。屋根が破れ、プルトニウムデンバーの街へと飛散することを避けるため、自分たちの命を奪う臨界反応を覚悟しながらの放水。
体内に蓄積したプルトニウムによる、発がんの恐怖。
資料室の設置。
核物質の人体影響を調べる機関への、検体・・・・・。


核兵器を持つ”という選択をした国も、こんなに大きな犠牲を払ってきたのか・・・。
その傘の下で、わたしたちもまた、守られてきたわけだ。
このひとびとの犠牲の下で。


こんな犠牲が必要のない世界に、
なるべく早く、していかなきゃなぁ。


いい加減な工場解体作業。
土の下にたた埋められているだけの、汚染された廃材。
こういう醜さって、いったいどこから生じるんだ?!?
もはや、自陣営の存亡をかけて、危険を承知の開発競争をしているわけでもない。
いやいや、もしかしたら、東西冷戦当時と、醜さの根源はおんなじなのかもしれないなぁ。そんな気もするなぁ。

ワンダー×ワンダー「北京パリ 大陸横断レース」

100年近く前のクラッシックカーで北京からパリまで大陸を横断。全長1万5千キロ、37日間の大冒険。刻々と移り変わる絶景の中、愛車とともに未知の大地を駆け抜ける。

美しい風景、刻々と変わる風土。
魅力的な人々、貴重で素晴らしい車たちが、過酷な環境をガンガン走り抜けていく。


初回1907年の優勝車両・ガソリン車の時代を幕開けしたITALAを、2年がかりで修復し参加する、自動車修理業のご夫婦。最高速度90km/hでかっ飛ばす。
車軸が折れリタイアを覚悟した他の車に、現地の工場の旋盤を借り、代替部品を一から創って修理してあげる。
トルコの山岳地帯で、トラックをよけようとして、スピン。”写さないでくれ”とナーバスにスタッフ車に閉じこもる夫。妻は放り出されて怪我、ITALAの前輪はぐんにゃり40度歪んでいる・・・
リタイアを決意。失意のまま、トランスポーターに車を積んでホテルへと向かう・・・ところが、途中で工場街へと方向転換。「ITALAを連れて帰らなきゃ」という奥さん。工場主は設備を「ただで貸すよ。助け合わなきゃ」
バーナーであぶり、ゆっくりと曲げ戻し。見守っていた奥さんが最後に、ゆっくりと愛おしげに水をかけて急冷。
17時から5時間かけ、ついに修復。


唯一の女性ペア・イギリスの主婦友達。車に詳しくないし、運転は学校への送り迎え暗いだけれど、参加を決め、丈夫と言われるクライスラーを買い、半年間、車の構造の特訓を受け。
スタッフ・参加者仲間・地元の人々に助けられながら、数々のピンチを乗り越えていく。あっけらかんと、たくましく、でも時にはしょぼくれたりもしながら・・・


マクラーレンで活躍した名F1レーサーは、あえて車高の低いアルファロメオのレーシングカーで、砂漠に挑む。
このレースが新婚旅行、というカップルも。「いっしょにこの車で北京パリを走ろう!」とプロポーズしたそうな。


唯一、オートバイで単独参加する60歳の男性。馬力がないので坂道はジグザグ走行でようやく登りきる。パンクもトラブルも多発。都度地元の人々に助けられながら・・・。


ゴールの、たくましい笑顔・笑顔・笑顔。


スタジオゲストの渡辺満理奈さんがおっしゃったように、愛にあふれてた。
愛。
技術への愛、車への愛、冒険への愛。
地球への愛、そして、人間同士の愛。

快晴。
夕方には西の空に薄い雲。