夜のうち雨。曇りの肌寒い一日。

プロフェッショナル 仕事の流儀 涙も笑いも、力になる 院内学級教師・副島賢和

大好きな薬師丸ひろ子さんの探偵物語をBSでやっていたけれど、なぜか観る気になれず。
で、あまり気が進まなかったこちらを観たら・・・とてもよかった。

病気やケガで入院中の子どものために、病院で授業を行う「院内学級」のエキスパート、教師・副島賢和。子どもの心を励ます独特の手腕で、注目される。病気で入院する子どもの多くが、家族に迷惑をかけたと考え、自分を責めてしまう。副島は、そんな子どもに道化師のようなテクニックと、心理学の手法を駆使し、笑顔を呼び起こし「自分を大切にしよう」とメッセージを送る。子どもたちを元気にする“魔法の教室”に密着する。
出演
【ゲスト】院内学級教師…副島賢和,【語り】橋本さとし貫地谷しほり

子供の心を、解きほぐす。
子どもを、下から持ち上げる。上から持ち上げるのではなく。ドジをふんだりうけないダジャレを言ったり。”失敗してもいいんだ、主役は自分だ”と感じてもらえるように。
そうっと、そばにいる。
興味のあること、得意なことを見極め、さりげなく仕掛ける。


病気と向き合っている子供たちは、自分を責めがち。そして、周囲にかけている迷惑を心苦しく思い、言いたいことも我慢しがち。
なんども病気を繰り返していると、いじめを受けているのとおなじような状態になるのだという。からだが自分を裏切る・これはつらい。不安。緊張。


子供たちの居心地に、細心の注意を払う。
ひとりひとりをしっかり感じ、こころから考え、さりげなく動く。
しゃべらないことを、読み取る。
ふわっとした気持ちで、病室に帰れるように。
我慢しなくていい、頑張らなくていい。不安があって当たり前、それをすっと口に出せるように・・・。


テクニックや手法に裏打ちされているのだろうけれど、それ以上に、ひとりのひととしての深い思いやりを、なるべくさりげなく、かつ、全身全霊で発揮されている。
ひとりひとりの子のことを、こころから大切に想っている。
退院が決まったことを喜ぶ表情。手術中の容体急変の知らせを受けた時の焦燥感あふれる表情。手術成功し安心した子供の様子に触れ、エレベーターにのったときの、涙が出そうなほど胸なでおろした表情。


熱血教師だった。
大病をし5年間闘病。肺を切除。
もう子供たちと走り回れない。思い描いていた将来像は消え、なにをしたらいいのかわからなくなった。
大学院で児童心理学を学んでも、なお見えない将来像。
やがて、院内学級の存在を知り、志願する。


少女のことば

私、もし大人になれたら、詩人になりたい

・・・大人になることが許されない子供たちが居た。
治らない難病と闘い続ける少年も居た。
過酷な現実、無力感にさいなまれたそうな。


みやざきりょうくんとの出会い。
病棟の人気者。その子がいると、みなが明るくなる。誰とも話そうとしない子が、りょうくんとは打ち解ける。
先天性の腸疾患、手術を繰り返し、副作用の強い薬を飲む。
そんなりょうくんが書いた詩”ぼくは幸せ”
(録画していないので、一言一句正確に書き取れてはいないかもしれません)

おうちに居られれば幸せ
ごはんが食べられれば幸せ
そらがきれいだと幸せ


みんなが幸せだとおもわないことが
ぼくには幸せだと感じられる。
だから、ぼくのまわりには、幸せがいっぱいあるんだよ

大きなますの原稿用紙に、鉛筆で丁寧にしっかりと書かれている。

すっげぇ苦しんでるところを見てるから、
それでもおまえ”幸せだ”だとおもってんのか・・・
おれはしあわせだとおもえるかな・・・と、
すげぇなって。

仕事で悩むなんてちいさい。
辛そうにしてる子がいると、りょうくんはそっとそばに居る。なにを話しかけるわけでもなく。
自分もおなじようにやってみよう・・・。


まもなく、12歳になった一か月後、りょうくんは容体が急変、亡くなる。
いまも副島先生は、迷った時彼に問いかけるという。「きみならどうする?」と。いまもりょうくんと一緒に歩いている。


短かった人生。そして、なんと意義深い人生。
長い・短いでも、恵まれている・いないでもないなぁ・・・。


遅かれ早かれ、わたしたちはみな、いずれ人生を終えていく。
みな、芥子粒のようなもの。かけがえなく尊い芥子粒。
どれだけの意義を、僕は残せるだろう。
どれだけの輝きに、僕は気づくだろう。
どこにでもある、幸せと尊さ。


痛みを体験してきたからこそ、
ひとの痛みが、ありありと感じられるのだろう。
別れを経験してきたからこそ、
居ることのかけがえのなさを痛感するのだろう。
凄いなぁ・・・。