NHKスペシャル アフリカンドリーム第1回再放送 悲劇の国が”奇跡”を起こす

構成も、映像も、見事。


ルワンダ。大虐殺から16年。今、年率8%の高成長を遂げているという。
にぎわう市場・明るい表情・おしゃれなひとびと。「俺たちは、ひとつだ」身分証明書を見せ、かつてあった民族の記入欄が、もはや無いんだと語る男性。でも、わずかに表情が硬い。


国をリードする、エリートビジネスマンたち。先ほどの市場の人たちと違い、抜け目ない感じに見える。実は彼らは、中国・アメリカ・スウェーデンなどなど、外国で成功し、帰ってきた人たちだという。
富裕層向けの住宅街、欧米のような大スーパー、欧米のエリートのようなセンスの人たち。
ディアスポラ。独立時の民族対立で、200万人のツチ族が海外に散った。そのひとたちが、祖国の荒廃を復興しようと、帰ってきている。100万人も。大統領もディアスポラの1人。そして、帰国優遇策を推進している。


抜け目ない感じに見えた、エリートビジネスマンたち。
高層ビルが立ち並ぶ、首都の未来予想図。
その魁となる高層ビルを建てている不動産王は・・・日本でビジネスを学んだ。大阪の中古車屋。かけた電話への、親父さんの喜びぶり!人柄がしのばれる。
アメリカで、南アフリカで、資産を形成し、
そして、わざわざ故国へ戻ってきた。中国人の建設家・インド人の資材担当、培った人脈を駆使し、仕事を明るく進める。

母への愛と、おんなじ。


南端の地方。報復を恐れ難民となっていたフツ族が、故国の平和と経済発展を耳にし、続々と戻ってきている。
16年ぶりの故郷に戻った10人家族。しかし、あえると期待していた両親は、すでに亡くなっていた。家は2年前の洪水で流され、なにもない荒地に。
近所の家に居候することに。荒れた農地・無い仕事・どんどん増える人口。途方にくれる村長。


ルワンダはじめての民放ラジオ局の経営者。欧米で、いかに民族対立を解決するかを学び、正確な情報を全国民が同時に知ることがなにより重要だと、虐殺後すぐ帰国した。
今、いとこと共に、南の地方で、コーヒー工場を創ろうとしている。
いい豆が取れるのに、輸出のすべが無かった。
ツチもフツも、どちらも豊かにならなければ、国の未来は無い。農村を豊かにするモデルケースにしたい。


何度も村を訪れ、説明をするいとこ。
はじめは警戒され、話を聴いてもらうのもやっと。
土地を奪われるのではないか、利益を全部持っていかれるのではないか。根強いツチ族への不信感。
実は、いとこ自身にも、フツ族の村に飛び込んで話をすることへの抵抗があるという。
そこは、彼が生まれ育った家のすぐ近く。彼は牧師になるため、海外に留学していた。16年前、逃げ遅れた母と3人の妹は、フツ族に鉈で殺された・・・。廃墟となり、木が生い茂る生家の跡。母と妹の元気な姿が浮かび、悲しいと語る、その硬くてちいさな表情。
その母は言っていたという

ツチ族フツ族は、必ず一緒に暮らしていける
わたしたちは同じルワンダ人なのだから

だから・・・コーヒー工場を創るのだという。自分の中にもある、民族を隔てようとする壁を取り払って。


最後の話し合い。
村の賛成派が説明をし、さぁ投票をしようというとき、不信の声が噴出し、収拾がつかなくなる。
ここまでじっと、村民たちの話し合いを見守ってきたが、ついに「私にもしゃべらせてくれ」と、誠意を込めて語りはじめるいとこ。緊張は隠せないし、ことばが硬い。そこで、用意してきた契約書を見せる。”利益は50%ずつ分配”と明記してある。通例は農民30:工場70。しかし、対等にパートナーとしてやりたいんだ・と静かに語る。
そこから2時間、村人たちの話し合いが続き、ついに合意。


起工式。明るく暖かい人々の顔。
とはいえ、かたやアフリカ風・かたやヨーロッパ風、明確に雰囲気は違う。
共にコーヒーの苗木を植える。
フツ族の見事な踊りに、ラジオ局の経営者も、軽く合わせて踊る。
・・・壁はまだ、厳然とある。でも、うまくいってほしいなぁ。


もともとは、ひとつの文化だった。
なのに、ベルギーが植民地支配するに当たり、鼻筋が通って背の高い人たちを身体測定で分け、ツチとして優遇し、フツを貧しいままにした。
人工的に創られた民族・・・っていうか、すべての民族は、人が創るものだから人工的か。
そんなものに、でも、現実に苦しめられ、こころも行動も支配されてしまう。
なんと罪深いことか。
なんと”苦”って、くだらなく生み出されるものか。


不動産王が、明るくオープンな表情でいわく。

俺たちディアスポラは、かごの中の鳥だった。
いま、自由に空をとびまわってる。だから、力強いんだ。
ルワンダは、素晴らしい国になる。

痛みを知っている人たちだからこそ、起こせる奇跡。