持続可能な「至福」

ぢすさんはじめ、”人類はもう滅亡するしかない”と観ている人は、たくさん居ます。
僕も、そうかもしれないと思っていた。


ほんとうに、そうでしょうか?
”持続可能な成長”って、有り得ないのでしょうか。


iso14001の事務局をやっていた時に、真剣に見つめました。


有り得ます。
ポイントは、なにが根源的な”幸せ”なのか、見据えたこと。
そして、その”幸せ”って、資源を消費することなく、永続的に発展させることが可能なのかを、問うたこと。




今日の毎日新聞夕刊に、見田宗介さんへのとても秀逸なインタビュー記事が。題して

人や自然、芸術を愛して、
持続可能な「至福」を。

ここ5年間、僕にだんだん見えてきたこと・・・
今、なにが起きている時代なのか、
なぜ、経済が行き詰ったのか、
そして、大量消費社会が終わった後も、”永続しうる相乗的な幸福”はちゃんとあるということを、
実にわかりやすく説いておられます。


多くの人に、全文を読んでいただきたいけれど、残念ながら、webには掲載されていないみたい。そこで、引用しながら、僕なりの言葉で論評・ご紹介します。



まず見田さんは、GMのスローニズム・・・実用品だった自動車を、年次商品化・高級感演出 によって、大量消費化し、T型フォードにとってかわった・・・を解説。

情報化・消費化社会が深化するにしたがって、ぜいたくこそが幸せだという錯覚、イメージを与えるようになったのです。
「プア」という英語も、500年前ぐらいまでは、「不幸な」という意味でした。けれど、近代に貨幣経済が浸透して、「不幸せな人」イコール「貧乏の人」という固定観念になった。

情報化・消費化社会は20世紀後半までうまく機能し、人類がこれまで経験したことが無いようなボリュームで、多くの人たちに幸福を与えた社会だったと思います。永久にその錯覚が続けば問題もありませんでした。しかし、20世紀の末くらいから、情報化・消費化社会は「資源」「環境」という二つの面で限界に直面していることがはっきりしたのです。

GM破綻の根本原因も、ここにある・と。


ならば、この”幸せの錯覚”を手放せば良い。


人間が感じる幸福には二つある。見田さんはこれらを「単純な至福」と呼ぶ。

  • 人間と人間が共存することの至福・・・すてきな人と出会う、友人と語り合うなど
  • 人間と自然が共存することの至福・・・草原や森の中で自然や動物に囲まれているような

この二つの至福は、資源の大量消費や環境汚染を必要としません。永続性があります。僕自身の話をすれば、この「単純な至福」だけで既に十分です。

更に「芸術」がある・と。
一枚の絵で、見慣れていた自然が新鮮なものに。ひとつの小説で、人間の奥深さやいとおしさに気づかされる。

芸術は「単純な至福」をどこまでも増幅し、豊かにしてくれる。しかも、資源を大量に消費せず、新しい方法で無限に展開することもできます。

金銭的、権力的な幸福は、他人を蹴落とすか他人を不幸にしなければならない。だけれど、「単純な至福」と「芸術の至福」は他人の不幸を必要としません。これは大量消費社会が終わった後の時代にも永続しうる相乗的な幸福であり、かつ重層的な構造を持っていると思います。


論評しながら読み返してみて、こんなことも思いました。
かつて、人類の大多数は、”生き延びる”ことに精一杯だった。
産業革命と科学の進展で、生き延びることは次第に容易になり、より高度な満足を求めるようになった。”大量消費社会”の”モード””流行””高級感”って、擬似芸術だったのではないか。創造力や感性を発揮せずとも、お金さえ出せば、それっぽい”イメージ・評価”が手に入るという・・・。


今回帰省した折、趣味に関してもらした母のひとことが、なぜだか心に留まりました。
誰かに高く評価されたいとか、作品を売りたいとか、教えたいとかいう気持ちは無い。見えにくいところだからと手を抜くのも嫌い。自分自身の納得する作品に仕上げたい。売ってくれ・教えてくれと言ってくださるひとがいれば、喜んで応えるけれど、それで先生とは呼ばれたくない。

芸術家としてなら、在りたいなぁ。

これからは、人類全員が、芸術家として生きる時代なのかもしれません。そして同時に、芸術家のパトロンとして。
全員それぞれ感性豊かに「単純な至福」を味わい、創造力を発揮して表現する。その交流が、より深い至福をもたらす。
それは、人類史の必然であるような気がします。
僕がなぜか、20世紀初頭の市民社会の萌芽に惹かれるのも、商業主義に毒される以前の、本来目指すべき姿をそこに観るからなのかもしれません。



だとすると、これからの経済活動・社会活動は、

  • 生存をサポートする
  • ひととひととの共存をサポートする
  • ひとと自然との共存をサポートする
  • 芸術表現をサポートする

ことが役割となっていく。
この観点で、事業計画を評価し、遂行していくことが大切になるのではないでしょうか。