志の高さ

イーヴ シルク・ドゥ・ソレイユのことを
理解するためには、
サーカス自体の歴史というものを
考えないといけないんです。
それはなぜかというと、
シルク・ドゥ・ソレイユ
サーカス自体の歴史を
変えようとしているからです。


糸井 聞いててゾクゾクしますよ。


マルセ そのとおりですね。


イーヴ サーカスの世界を変えようとしている一方で、
サーカスの世界を尊重しています。


マルセ サーカスの源はいったい何だったのか、
古いサーカス、伝統的なサーカスを
頭に入れながら
新しいサーカス作りができると
私たちは思います。
これからもシルク・ドゥ・ソレイユ
大規模な変革を
進めていくことができるでしょう。

一方、オリエンタルランドは日本において、ショービジネスの歴史を、変えてきた。
よりたくさんの人々が、エンタテイメントを楽しむように・・・と。


”遊ぶことは、不真面目だ!””不真面目は、いけないことだ!”
・・・歴史を紐解くと、そんな時期って、古今東西、たくさんある。
逆に、神事と一体視されて持ち上げられたりも、する。


芸事も、医療も、神につかえるひとたちも、売春同様に、
時代と文化により、
尊ばれて持ち上げられるか、卑しまれて差別の対象になるか、僕が知る限り、どちらかだ。
それは、おそれを呼び起こすからだろう。
生命の本質に触れ、”昨日と同じ明日”を揺るがすから。


祭り上げるわけでも、卑しむわけでもなく、
芸術を楽しむ。芸能を楽しむ。生活の中で。
役に立つ、立たないを超えたところに、人生の意義がある。


やれやれさんが”本気でとことん、好きなことを追いかけるぞ!”って決意する日が、はやく来ますように!

移動テントのツアーショーと
常設ショーの違いについて訊いてみたところ‥‥


〔中略〕


もっとも大きなことは、と前置きして
こんな話をしてくださいました。

アメリカやカナダでは、子どもたちは
 だいたい12歳くらいの頃に、はじめて
 シルク・ドゥ・ソレイユを観ます。
 そのうちの何人かは、うれしいことに、
 “シルク・ドゥ・ソレイユで働きたい”と考えて、
 そのために勉強をして、就職をしていきます。


 昔だったら、弁護士になりたいからこうする、
 医師になりたいからこういう勉強をする、という
 ことだったのかもしれませんが、
 そこに新しい道を生むことができたのは
 シルク・ドゥ・ソレイユにとって、大きな歓びです」

私は、もともとは、
もっとトラディショナルなサーカス団にいて、
そこからこのシルク・ドゥ・ソレイユ
移ってきました。
ここに入ってもっともうれしく感じたのは、
会社の中に、ひとりひとりが助け合う、
みんなで手を差し伸べるような
システムがあるということでした。

1960年代特有の価値観がありました。
それは、いっしょに生活をしながら、
「よりよい世界をつくっていく」
という目標を持つことです。
私はその価値観に基づいた形で演劇集団をつくり、
やがてそれはシルク・ドゥ・ソレイユ
なっていったんです。
(中略)
いまでもその価値観は
シルク・ドゥ・ソレイユの中に活きています。
たとえば、私たちはクリエーターの集団であって、
神さまでもないし、どこかから
啓示を受けているわけでもありません。
私たちがいっしょに仕事をするうえでの
最低限の原則というのは、こうです。
「最良のアイデアが勝つ」
これは、ヒッピーの世界から残されたものです。

舞台裏の長めの廊下には、
ズラッとポートレートが並んでいます。
これは、長い歴史を持つ
ミステール」の舞台を踏んだ
すべてのパフォーマーのみなさんの写真です。
現役でがんばっている人も、去っていった先輩も、
すべての人の顔が、ここで見られます。

母親はまだ生きていて、やはり、
私が竹馬に乗ることにひどく反対しました。
子どもがいるのに何をやっているんだ、
もっと真面目になりなさいと言われました。
いまさらクラウン(ピエロ)になるなんて、
おまえは愚かだと言われました。
けれども、私は、ハッピーだったんです。
私は愚かだけど、ハッピーだった。