物事を『中立』に見るのではなく『両側』から語れる人になってほしい

「物事を『中立』に見るのではなく『両側』から語れる人になってほしい」。テルアビブの在イスラエル大使館で専門調査員だった佐藤純子さんは、約4年前に言われた言葉が今も心に残っている。
 大学院生だった当時、エルサレム近郊のユダヤ人とイスラエル国籍を持つパレスチナ人が共生する村で半年間、ボランティア活動をした。ある晩はユダヤ人と食事しながらホロコーストナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺)について教えられ、翌日はパレスチナ人とお茶を飲みながらイスラエル占領下の思いを聞く生活。そんな中で、あるパレスチナ人男性がそう言った。

 その後、在イスラエル大使館に採用され、05年6月から2年間、現場を走り回った。イスラエルパレスチナ双方のオリーブ生産者を集めて合宿セミナーを実現したり、テロなどで家族を亡くした遺族の対話を促したりして、信頼醸成に努めた。一方に偏らず、常に「複眼」で物事を見極めようとする姿勢が、いつの間にか習慣になっていた。

 任用期間を終えて帰国した佐藤さん。あの言葉を胸に、ゆっくりと新しい生活を始めるつもりだ。【前田英司】

毎日新聞 2007年6月13日 東京夕刊