毎日新聞朝刊 時代の風 21世紀の生命研究 米本昌平

「生気論」に新たな意義
・・・うーん、面白い!

ドリーシュの初期の著作を丁寧に読んでみると、エンテレキーとは「情報」を供給する自然要因として解釈できることがわかった。今日、われわれは、情報とは、物質でも、力でも、エネルギーでもないことを知っている。しかし20世紀はじめの研究者たちには、ドリーシュの主張は非常に難解なものに見えてしまったのである。

たしかシュレディンガーは、情報とエントロピーと生命とを結びつけて論考する課題意識をもっていたっけ。

確かに、分子生物学の成果は、機械論と生気論との対立に回答をもたらすものであったが、それをこれまでは、機械論の勝利と一方的に位置づけてきたのである。
戦後、生物学はとかく形而上学過剰であったとされ、研究者は生気論者のレッテルを貼られることを恐れて、実験と観察に自らを縛ってきた。
(中略)
われわれは、生命を語るだけの生命論から、生命現象からより抽象度の高い概念を引き出す試みにも大きな意義を認め、それを鼓舞する、知的飛翔の時代を前にしているのかも知れない。