フジ子・ヘミングさん ソロリサイタル

墨田トリフォニーホールにて


不思議な体験だった。
水のように綺麗な音が、少し遠くを流れている。
感情は揺さぶられない。
思考はよぎるけれど、まったく邪魔にならない。
音が、身体の痛みとして感じられたり、自分の背後にあるなにか大きなものに作用しけたり。そして、我知らず涙が流れたり、笑みがこぼれたり。


身体と超自我に働きかける音。
素晴らしかった。
そして、聴衆の集中力。


第1部で2曲追加演奏。
そして第2部。わたしの身体の用意が整ったのか、痛みはほとんど引いた。
ピアノにとっては少し硬いホールトーンを、ものともしない響き。
お客さんがパンフレットを落とす音さえも、音楽の一部であるかのよう。


拍手を受けるときの、はにかみ、そして喜び。
フィナーレ、思わず立ち上がって拍手した。ふと気づくと、ひざの上の上着とパンフレットが床に(^^;;;
全身全霊を打ち込んだ演奏の後にもかかわらず、アンコールを2曲。


終演後。あれだけたくさんの聴衆が居たホールの空気が、すうっとしていた。
帰路に着くお客さんの顔、みなどこか崇高で、そして正直だった。
猥雑な街が、とても魅力的に、さわやかに感じられた。


感動なんてものを、超えている。
フジ子さんは、たぶん観客のためでなく、自分のためでなく、お母さん・・・をシンボルとする崇高なものにむけて演奏をしている。
それは、思いのままであり、孤独であり、
そして、そんなものを超えてしまっている。厳然とすべてのなかに存在する、本当に大切なものとつながっている。


腰痛が治った。