不安を超えて素晴らしさに触れた、とある体験

これ、なかなか恥ずかしい、とっても滑稽な体験なので、あまりおおっぴらに語ってこなかったんですが・・・聴いた人は、みな大笑い(^^)
前項と響きあう体験なので、この機会に書いてみます。


インディアンのいくつかの部族で、成人の通過儀礼として、ひとりっきりでごく限られた装備で、大自然の中で数日間過ごす・・・ということをやるそうです。
その真似事をやったときのお話。


伊豆半島の先端に、大自然の中でいろんな研修が出来るキャンプ場があるんです。
そこで、寝袋と水と雨具だけを持って、ひとりっきりで、24時間過ごす。
僕は、竹林を中心とするエリアを選びました。


なんせ、そのエリアに誰も入ってこないことは保障されてる。
僕は思い切って、すっぽんぽんになってみました(^^)
靴も靴下も、全部脱いで。
最初こそ、足の裏がちと痛いような気もしましたが、すぐに慣れて。
いやぁ、気持ちいい!!!
全身が竹林の空気を感じます。足の指が、大地の細やかな起伏をありありと感じてます。鳥の声、風の音・・・


ん?ブーンという羽音???
ぅわ!僕は凍りつきました。
スズメバチです!!!ほんの数メートル先に、スズメバチが。
僕はすっぽんぽん。刺されたら、ただじゃすまない・・・。


僕は、普通の蜂はまったく怖くないんです。
こちらが脅かさない限り、刺してこないことを知ってるから。
幼いころ、そう教わった。そして、実際何十回も遭遇して、刺されたためしがない。
ところが、スズメバチだけは違う!刺されると命に関わる。こちらが脅かさなくても、むこうから刺してくる。やつらはミツバチのように刺すと自分も死んでしまうわけじゃないので、ガンガン攻撃してくる・・・だから、スズメバチだけは、遭遇したらすぐ逃げなさい。そう教わっていました。


でも、ここは竹林。どこにも逃げ隠れする場所はありません。
あわてて走り出せば・・・ビックリして攻撃してくるだろう。
もし刺されたら・・・助けを求めたって、誰にも聞こえない。毒を吸い出して事務所まで歩くしかないな。かなり距離がある。動くと毒が回るだろうな・・・大ピンチ!


その瞬間、ふと思ったんです。
スズメバチもミツバチも、同じ蜂じゃないか。違うと思い込んでるのは、俺。
いつもどおり自然に向かい合ってみよう。
・・・そもそも、それしか選択肢はないんですが。


スズメバチは、じっとこちらの様子を伺っています。
ぼくも彼とまっすぐ向かい合いました。目を離せません。
次第に間合いが詰まってきました。1mほどの距離になったでしょうか、彼はじっと空中で静止して、僕と見つめ合いました。
しばしそのまま、互いを感じあって。


ふっと空気がゆるみ。
なにかが通じ合ったような気がしました。


やがて僕と彼は同時に向きを変え、それぞれの方向に。


なんだか、サムライとサムライが向き合ったような、そんな体験でした。
僕はまるはだか、相手は蜂なんですけど・・・。


そのあと振り返ってみて、こんなことを想いました。
スズメバチは、毒が強力であるがゆえに、強く恐れられる。
強烈に怖がるから、スズメバチもビックリして攻撃してくる。
「ほら、やっぱり奴らは攻撃してくる。ひどい目にあった」と、ますます怖がる・・・。
そうして人間とスズメバチは、どんどん不幸な関係になってしまったんじゃぁなかろうか(^^;
恐れが、衝突を生み、恐れを増大させ、衝突をふくらませ・・・そんな関係って、人間同士でも、しばしば起きてるんじゃぁないかなぁ。


そんな出来事で始まった24時間。以後、とっても楽しい時間でした。蚊と仲良くなったり(^o^)
竹薮だけに、たぁくさん蚊が居て。抵抗せず、彼らの希望通りに血を吸わせてみたんです。すると、凝ってるほうの肩や腕を、たくさん刺してくれてる!


終わったあと、体験談を述べ合うセッションで。
僕の体験談を聞いたトレーナーが、連想して教えてくれたのが、前項でちらりと紹介したスリランカ最大のNGOサルボダヤのリーダー、アリ博士のお話。農村振興活動を、内戦地帯もまたいで行っているので、戦闘が激しかったころは、しばしば兵士に銃口を突きつけられることがあったんだそうです。
「怖くないですか?」と訊ねたら、「撃たれるという懸念をこちらが全然持っていなければ、相手は引き金を引けない。撃たれないと判っているから、ますます怖くない」と答えてくださったんだそうです。