特集ワイド:チェルノブイリの25年を生かせるか 現地で医療活動の専門医に聞いた - 毎日jp(毎日新聞)

 ◇福島と同じ「レベル7」、現地で医療活動5年半の専門医に聞いた
 ◇放射性ヨウ素セシウムの健康影響「注意すべきだ」
 広範囲に放射性物質をまき散らし、健康被害が懸念される福島第1原発事故。特に心配なのが子どもたちへの影響だ。福島と同じく最も深刻な「レベル7」とされる旧ソ連チェルノブイリ原発事故では、何が起こったか。同事故で汚染されたベラルーシで5年半、医療活動をした甲状腺がん専門医で長野県松本市長の菅谷昭さん(68)らに聞いた。【宍戸護】
(中略)

 小児甲状腺がんは普通、年間100万人に1〜2人。だが、ベラルーシでは原発事故の4〜5年後から急増し、隣接するゴメリ州では130倍にも達した。当初、甲状腺がんと事故の因果関係を否定していた国際原子力機関IAEA)も、96年に一転して認めた。ただ、白血病など他のがんや病気については「結論は時期尚早」などとし現在に至っている。

 日本ではあまり伝えられていないが、菅谷さんによると、甲状腺がんの手術を受けた子どもの6人に1人が、後に肺に転移していることが分かっているという。

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(中略)

 「ベラルーシではセシウム137が3万7000ベクレルの汚染地からも、小児甲状腺がんやさまざまな症状が出ている。福島の放射性ヨウ素の汚染地図は公表されていないので、何ともいえませんが、ベラルーシにおけるチェルノブイリ事故2週間後の放射性ヨウ素の汚染地図から推測すると、セシウム137の分布とそれほど変わらないと考えられる。健康影響については十分注意して考えるべきです」

 菅谷さんは、100ミリシーベルト以下の被ばくなら発がんを含め健康影響の可能性は低い、との説についてこう語る。「それを唱える研究者がよって立つところは結局、広島・長崎の原爆の影響を基にした長期調査ですが、あの結果は主に外部被ばくについての調査。チェルノブイリで起きている事実からすれば、線量に関わらず甲状腺がんになる可能性も否定できないと思います」

 チェルノブイリの被災地は今、どうなっているのか。交流のある現地の複数の医師から聞いた話として、菅谷さんはこう明かす。「子どもたちの免疫機能が落ち、風邪を引きやすくなっています。疲れやすく、貧血の子も多い。そのため授業を短縮している学校もあります。また、ここ10年くらいは、早産と未熟児が非常に増えています」

 その背景には、多くの住民が汚染地で栽培された農作物を食べ続けていることもあると見られる。こうした健康影響と原発事故の因果関係が、必ずしも明らかではないのは菅谷さんも承知している。「それでも、甲状腺がん以外にもいろいろな症状が事故後に急増しているということは、もっと広く知らせたい」

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 放射性物質の総放出量はチェルノブイリが520京ベクレル(1京は1兆の1万倍)、福島は77京ベクレル。福島のセシウム137の放出量は単純計算で広島原爆約168個分とされる。チェルノブイリの場合は原発30キロ圏内は除染し切れず、今も人は住めない。政府の除染はうまくいくのか。

 90年からウクライナ住民を支援し、福島県南相馬市放射線量を継続調査しているNPOチェルノブイリ救援・中部」(名古屋市昭和区)理事で元名古屋大学助手の河田昌東(まさはる)さん(71)は、ウクライナと福島を見比べて「学校の校庭や公園の除染は可能。農地は平らならばできるが、山地は難しい。森になったら不可能です。莫大(ばくだい)な予算もかかり、除染をして住民を戻そうとする国の政策は恐らく破綻します」。菅谷さんも「これだけ大規模な汚染だと、医療に例えれば、除染だけでは根治的な治療になりません。除染費用の一部で、学校単位で子どもたちを一定期間、汚染がない場所に移せば、体内からセシウムが排出されてきれいになる。福島の子どもたちが、ベラルーシの汚染地の子どものように健康が損なわれないよう、政府は早く手を打つべきです」と、「一時的集団移住」を提案する。


 事故から25年。チェルノブイリ原発事故の教訓は福島に生かされているのだろうか。


毎日新聞 2011年11月24日 東京夕刊

チェルノブイリへの、日本の支援活動の報道を観てきた人なら、菅谷昭さんの名は知っていると想う。
たぶん、世界で一番、現地の健康被害の実態に詳しい医師だ。


これだけ大きな健康被害が、現に生じていても、
放射線の影響と国際機関が明確に認めているのは、甲状腺がんだけ。それも、事故後10年経ってから・だ。
それなのに、明確に認められている影響だけに基づいて、安全対策を論じる大馬鹿者が、たくさん居る。