在る
『ただそこにいる』ということが分かってきたのでしょうね。演じて、役を作って、装って、作品の世界に入るのではなく、自分そのものに降りていくことで、映画の『場』に立つ方法を知ったのです
岸部さんは撮影場所に電車でやってくる。尊敬する俳優、故笠智衆さんにならってのことだという。「最初は目立ってサインを求められたりしたらしいですが、そのうちに、一市民として街の空気に溶け込むすべを身に着けたんでしょうね。それは肌の感覚だと思いますが、それが大事なんじゃないかな。待ち時間にいすに座っている時は『俳優さん』なのに、一歩立つと、すっかり街に溶け込んだ『おっちゃん』になってしまう。さすがです」と光石監督。