住吉の長屋

”住まう”ということの根本を問うた、とぉっても高名な住宅。
昨日放映の壇ふみさん・阿川佐和子さんによる安藤忠雄さんインタビューで、あらためて興味を持ち、webで調べる。


しまった!昨年末に原寸大模型の展示が東京であったんだ・・・僕も、体験したかったなぁ。あの中庭。
体験したいがゆえに、工業短大の卒業研究として、2x4で原寸再現したチームもあったり。
いったい、どんな住まい心地なのか、知りたくて体験談を探したら、あった。

 数年前、幸運にもこの伝説の住宅に足を踏み入れる機会があった。


 前日に大阪入りし、下調べを確認する。しかし、取材当日、空は今にも雨の気配。ホテルから施主に電話を入れ、順延を相談するが、予定があるために難しいとの答え。施主は電話を切る際に「それに、今日は晴れるから」と付け加えた。


 大阪市内から住吉までは車で30分。あれだけ思い焦がれた住宅の撮影日に、雨。泣きたい気分だった。入り口で挨拶を済ます。写真家はカメラを構え、僕は施主ご夫妻にインタビューを始める。少しして気がついた。雨がやんでいる。コンクリートに切り取られた空を見上げると、雲間から太陽が。それから晴れわたるまではあっという間だった。


 日常的に自然と触れる生活、それが住吉の長屋に住む、ということだ。窓越しに見た空では、天気の行方など分からない。毎日住まいから空を眺め、肌で季節を感じる生活を目の当たりにして、心からここに住んでみたいと思った。
 気がつくと、燦々(さんさん)と陽光の当たる中庭でご夫妻と1時間以上も話し込んでいた。「自然とともにある生活にこそ人間生活の原点がある」。建築家である前に、人間として生きることに常に熱心でありつづける安藤の感覚に、その時、少しだけ近寄れた気がした。


猥雑な外界と、箱で隔絶し、”道”を感じやすくした。
そして、箱そのものは、外界と調和している。
・・・そんなふうに、言えるんじゃないかなぁ。


そういう意味では、ディズニーランドも、そうだ。
空・風・雨が印象的。外界の猥雑さを遮断しつつ、外界と調和してる。
ミッキーたちが、豊かな表現力を身につけたのも、似てる。


世の中のいろんな要素の中から、エッセンスを抽出する。
陰と耀、物事のながれ、自然の移ろい、意思と作用、美と善・・・が、わかりやすく生じる。