糸井 説明を聞いて、いろいろ腑に落ちました。
シルク・ドゥ・ソレイユは、
世界的な成功を収めている企業でありながら、
グローバルな企業にありがちな
「パワーの文化」をまったく感じなかったんです。


ジル ここでは、ひとりがパワーを持ちません。
ショーがどうなるか、ひとりでは決めません。
しかし、ショーがどういうふうに
なり得るかということについては、
誰もが等しく影響を与えることができます。
そのショーをクリエイトする人たちすべてが
いっしょに働くことで、
経験を蓄え、影響を与え合っていきます。
それゆえ、ひとりがパワーを持たないのです。


糸井 関係性をとても重要視しているんですね。


ジル そのとおりです。
やはり、クリエイティビティというのは、
会社の壁の中に入っているわけじゃありません。
イデアは、人から出てくるんです。
人と人が、真剣に、楽しく、1時間話すだけで、
すばらしいアイデアというのは出てくる。
重要なのは、その関係性なんです。

原 株価の「時価総額」に汲々とするってことが
「どれだけ意味のないことか」を、
経済学的に証明してやろうと思ってるんです。


糸井 これから?


原 若手の学者を集めて、研究資金を与えてね。


糸井 攻勢に転じるわけですね。


原 現在の主流経済学派が
理論のよりどころにしている数学を使って、
時価総額」を至上とする経済思想が
どれだけまちがっているのかを、証明する。


糸井 それができたら、一変しますよね。


原 その仕事に、着手したんです。