近年の自転車事情

朝方、ちと残業して浸水トラブルの対処をし、終業。


寝た後、17時から自転車に乗る。

17:30-19:00 キョーワ

かなり大きなお店。バイクディーラーくらいの規模。
メインのショールームと、路地を挟んでサブショールーム&修理部。メインショールーム奥の事務所がガラス張りになってて、そこから店内全体が見渡せる、実に機能的なレイアウト。事務室間仕切りは木製サッシで、たぶん40年以上前の造作かなぁ。
ガラスケースに、非売品の古いパーツがあったり、入口脇の壁には、ルネ・エルスのスポルティーフが額に入れて飾ってあったり、天井から巨大チェーンホイールつきの、スピードレコーダーらしき自転車がつるしてあったり。
でも、売ってる品物は、現代の完成車と小パーツ。古い在庫をずっと持っているようなお店ではなく、ホームセンターと伍して、整備のよさを前面にアピールしながら新車をばんばん売るお店と感じた。竹製の非実用的な面白い自転車も一台あったけど。
お父さん、息子さん、奥さん、らしき3人の店員さん。息子さんらしき方に”教えてもらいたいんですけど・・・”と声をかける。
”BBと後ろハブのがたつき調整、やるといくらくらいですか?”「いやぁ、これ、直せないです。」

  1. がたが出てるってことは、たぶん金属が磨耗してて、要部品交換。
  2. パーツが進化し、規格が変わっているため、これに合う部品は、今作っていない。
    1. 当時のパーツを在庫するお店で直す・・・同じお金をかけても、性能は現代のパーツより低い
    2. 無理やり、現代のパーツを組み込む・・・ちゃんとした性能が出ない
  3. 自転車そのものの性能が、段違いに上がっている。
    1. ブレーキは、10m必要だったのが3mで停まれるほどに
    2. 車重も軽い
    3. 走行抵抗も低い
    4. 変速の操作性が断然良くなってるし、多段化

いわば、真空管TVを直そうとするようなもの。
真空管が、無い。なんとか探し出して修理しても、画像が出るのに30秒待たなきゃいけない。
ボディだけ使って、中身はデジタルTVに入れ替える手はあるけど、しっくりとは合わない。
「どの道、7-8万円はかかるでしょう。同じお金をかけるなら、新車を買われたほうが、自転車に乗ることそのものを楽しめますよ。この自転車に愛着があるなら、乗らずに保管したほうが。」


ううむ、合理的。なるほど。
専門用語を使わず、たとえ話をうまく織り交ぜながら、実にわかりやすくアドバイスしてくださった。


引き続き、「では、今お勧めのスポーツ車は?スポルティーフ的な車種が欲しいんですが」・・・と、現在の自転車状況も教えていただいた。

強いて言えば、ラレーで、往年のクラブモデル的な車種を今も作ってる。
しかし・・・”おしゃれしたい”ならともかく、”乗ることそのものを楽しむ”なら、お勧めしない。
なぜなら、往年のムードのパーツ(たとえばワイヤー外だしのブレーキレバー)を、中国や台湾で復刻させることにコストを割かれているから。
おなじ10万円出すなら、モダンなパーツを使ったモデルのほうが、パーツの質がいい。

馬の障害競技のようなもので、もともとロードレーサーがトレーニングとしてダートや自転車を担いで上る崖を含むコースを走っていたのが、競技になったもの。マウンテンバイクよりも華奢なフレーム・細身のタイヤ。ロードレーサーよりもワイドなギヤ比・悪路を走れるタイヤ。
”重量もマウンテンバイクより軽いわけですよね!”「いや、それが。ほらこのカタログを」・・・ぅわぁ!!!45万円級のトップモデルは、シクロクロスバイクと同程度の重量だ!!!「しかもタイヤも、太いけど、漕ぐと軽いんですよ。」現代のトップモデルって、そんなことになってるんですねぇ・・・。「ロードレーサーでも、フレームに関しては10年前のツールドフランス優勝者とほぼ同じ技術を使ったモデルを、私達アマチュアが手に出来ます。パーツはもっとスペシャルなのをトッププロは使ってるけど」
シクロクロスバイクは台数が出ない分、ロードレーサーやマウンテンバイクよりはちょっと割高。
”フロントサスペンションって

  • お勧めのメーカーはTREK。そして、価格帯によるけどルイガノ

アメリカとカナダのメーカーだそうで・・・。
”30年前は、一流自転車はヨーロッパという感じでしたけど、今は北米なんですか?”「ヨーロッパにもまだ、一流メーカーはあります。ただ、彼らは地元の部品を使いたがり、シマノの部品をあまり使わない。北米のメーカーには、そういうこだわりが無い。今、カンパニョーロとシマノには、性能に大きな差があります。価格、部品の入手性、アップグレードのしやすさから行っても、なるべくシマノ純正か、シマノ規格の部品を使ってる自転車が、乗って楽しむにはお勧め」
なるほど。
イタリアのビアンキ、イギリス(今は台湾製)のラレーも、日本向けモデルはシマノ規格の部品を使ってるので、まずますとのこと。ただしラレーはいまや、10万円以下の、かつてのネームバリューを使った、ムードを楽しむモデルのみ。
ブリヂストンって、元気ですか?”「アンカーという別ブランドで、スポーツ車をやってます。アンカープロはなかなかいい。15万円くらいからあります。ただし、ロードレーサーと、マウンテンバイクしかありません」

  • 価格帯は、定価で10万円が入門車

10万円級からは、性能もまずまずだし、上級部品と近い規格を使用してて、交換やアップグレードも容易。
20万円になると、フレームがぐっと良くなる。
TREKの10万円級(販売価格で8万5千円くらい)は、フロントフォークとシートポストがカーボン。20年前、\85000-でどんな自転車が買えたか振り返ってみると・・・安いなぁ!
パーツは、全てシマノにすると高くつくので、要所のみシマノ、他は同規格の台湾や中国メーカー部品を使う例が多いとのこと。

  • そのほか・・・

ロードレーサーも、ほとんどWOタイヤに。チューブラータイヤは、レース出走者の1割程度・・・”優勝か、リタイアか”というハイレベルな人たちが、超高性能レース決戦用タイヤを使うのみ。
フロントサスペンション、デメリットは約1kgの重量増。ペダル踏み込み時の上下動は、立ち漕ぎ時は出るけれど、すわり漕ぎなら気にならない。メリットは路面の段差があまり気にならないこと。07年モデルのルイガノに、1車種ドロップバー+フロントサスのがあった。
モデルチェンジ。TREKは来週08年モデル発表。ルイガノが10月上旬。大体10月までに、各メーカーの新モデルが発表される。生産調整をうまくやるので、旧モデルはほとんど売り切り。今発注すると、たぶんあれもこれも「品切れ・08年モデル生産を待って」と返事される。


綺羅星のようにあった、日本の自転車パーツメーカー。サンツアーや栄はもはや無く、ダイヤコンペもほぼ実用車用部品のみ。杉野は健在でシマノ規格のアフターマーケット部品を作っているがメーカー組み込みでは見ないとのこと。
しかし、シマノはカンパニョーロも凌ぎ、品質でも世界一のメーカーに。それも凄いよなぁ・・・・・。激しい技術開発、的確な商品企画、いろんな経営戦略がうまくかみ合ってこそ、なんだろうな。
「自転車を漕ぐ・・・ということはずっとおんなじ。でも、ものとしての自転車は、30年前とは、まったく別物に進化しちゃいました。」
そういえば、たしか35年前・僕の小学生時代。「人力飛行機は、実現不可能」という記事を読んだ。トレーニングを積んだ人間の出せる出力、必要な浮揚力、機体重量。これらから計算すると、飛べない・・・と。
鳥人間コンテストも、たしか当初、プロペラ機部門は、飛ぶこと自体が奇跡的だった。
人間の出力は、たぶんさして変わらない。でも、トレーニング方法は科学的になり、機体重量は新素材とコンピュータによる強度計算により軽くなり、空気力学の進歩で浮揚力は増した。かくして飛翔に成功し、さらにより遠くへ・より早く。ペース配分、心拍数モニター、無線、GPS。いずれ横風への対応も進歩するだろう。
人が漕ぐということはおんなじ。でも、飛べないと断言されていたのが、競技として成立するまでに。進歩って、凄い。




さはさりながら。
目の前に、30年前の自転車がある。
状態は悪い。ずっと屋外保管。しかも、僕のものとなる前、長く雨ざらしになっていた。
でもね、動くんだよ。もちろん往時の性能100%ではない。でも、ママチャリと比べたら、ずっと軽く走るし、ちゃんと停まる。
ブレーキもしっかり効く・・・後ろブレーキセーフティーレバーの戻りが悪いけど。
さびの進行は止めた・・・塗装はぼこぼこだけど。
ペダルベアリングも軽く回るようになった・・・時々”コキッ”と鳴るけど(^^;。
タイヤもまだ新品・・・往時より太いけど。
割れたサドルも交換した・・・お尻がまだ、前のサドルをなつかしんでるけど。
ハンドルもバーテープを巻いて握りやすくなった。
ハンドルステムは固着して上下しないけど、今の僕には、このポジションで良い。


あとは、BBと後輪のわずかなガタさえ、玉押し調整で直せば・・・新品時の回転性能は出ないかもしれないけれど、今の僕には十二分にスムーズな乗り味になるはず。


やがて、僕のニーズは変わるかもしれない。
そもそも体力が上がるだろう。最初1時間かけた葛西臨海公園行き、今はほ40分で楽々行ける。
もっと遠くに行きたくなるかも。もっと速く走りたくなるかも。もっと悪路に挑戦したくなるかも。
新車を買うのは、それからにしたいな。
キョーワのお兄さんの、わかりやすくて親切なアドバイスに深く感謝しつつ、今の時点ではそう想っています。