NHKスペシャル 海軍反省会 第1回 なぜ開戦に至ったのか

凄い。今だからこそ、の、とても力が入った番組。
旧日本海軍の幹部たちが、後世に教訓を残すためにと、月1回、”海軍反省会”という会合を持ち、
なぜ、どこで、道を誤ってしまったのか、語り残していた・・・のだそうだ。


率直に真実を語れるよう、秘密会で行われたが、
関係者がほぼ亡くなられつつある今、その膨大な録音テープが、NHKに託されたのだという。ありがたい・・・。
今夜は、開戦に至る経緯の反省。

通説と異なり、「海軍にも、開戦に至ってしまった責任がある」との証言。

陸軍との内戦を恐れて、対米開戦に賛成してしまった。
けれど、もし我々海軍が命を賭けても反対していたなら、アメリカと勝ち目の無い戦争をすることにはならなかった。
内戦でいくらか命が失われたかもしれないけれど、無謀な戦争であんなにたくさんの命を失い、国土を灰にすることはなかった

・・・と。
なんとも赤裸々な、真に迫った肉声。


もうひとつは、軍令部が、予算権限まで持ってしまったことへの反省。
ライン(指揮)とスタッフ(参謀)が機能分離しているからこそ、
参謀はしがらみに捉われず、分析・作戦立案・選択肢を提示し、指揮官は意思決定・実行に集中できる。
ところが・・・

自分たちで艦隊増強予算を要求・獲得しているのに、それで「戦争に勝てません」とは言えなかった


高校の歴史の授業で、米騒動を体験したひとのインタビューの録画を観た。
観終えたあとの、先生の言葉が印象に残ってる。

過去は3つに区分できる。
体験者が居る過去
文献で調べるしかない過去
考古学発掘で調べるしかない過去


今、この米騒動あたりが、私たちと同時代に体験したひとが居る、ぎりぎりの過去。
これより前の出来事は、もう、文献をあたるしかないんだ。

あれから30年。
そろそろ、第2次世界大戦も、”文献で調べるしか無い過去”に近づきつつある、ということなんだなぁ。


だからこそ、
関係者が亡くなられつつあるからこそ、
公に出来なかった、こうしたテープが、公開される。


戦後、日本が長く平和に過ごしてこられたのは、
政治・行政・自衛隊の中枢に、戦中の悔悟をしっかり刻み付けたひとたちが居たからなのでは無いだろうか。
ただしその悔悟は、あまりにも深くて、とうてい他人には語れなかったろう。
この海軍反省会が、みなさんが第一線を退いたあとに、ようやく開始され、それでもなお、秘密会にせざるを得なかったように。


ここにきて、田母神さんはじめ、危ういひとたちが、政治にも自衛隊にも現われてきたのは、
戦中の悔悟を、まったく引き継がれていないから、なのではないだろうか。
今、毎日新聞朝刊で連載されてる小説を読んでいても想う。団塊の世代の方たちって、むしろ僕たち以上に、戦争のことをなんにも知らないんだなぁ・・・って。
親御さんが、あまりにも辛い、語りづらい体験をしているから、語れなかった。
そして、物の不足や社会資本の傷みを、”不当に他の世代より損をさせられている”と捉えてしまった。僕の父母たち・昭和10年代生まれと違って、なぜそうなってしまったのかを知らないから。


海軍幹部のみなさんが、こうして後世に、率直で赤裸々な反省の声を残しておいてくださったことを、ありがたく想う。
こうした取り組みが、陸軍や政府でも、なされているといいなぁ・・・。