ベルリンの壁崩壊から20年

今日、「20年経つというのは、こういうことだよなぁ」・・・と、しみじみ思わされた。
それは、マイケル・ジャクソンのDVD ”ライヴ・イン・ブカレスト”のユーザー感想欄。こういった感想が、ちらほらと。

マイケルが観たくて4000円もはたいて買ったのに、これじゃマイケルじゃなくて客の表情ばかり映っていてかなり気味が悪い。
スーパースターマイケルジャクソンも、こんな編集の仕方じゃ台無しだ。

悪いところは、観客の数、熱狂ぶりはMJの偉大さを感じますが、熱狂する観客たち、失神?酸欠?する観客のカットイン映像がこれでもか、これでもかと、何度もしつこく出てきます。たまになら良いですが、DVDの最初から最後までいったい何人倒れてるんだってぐらいでてくるので、だんだん不快感から怒りを覚えます。映像を編集した人間のセンスを疑います。この編集をMJは知っていたのだろうか・・・?

観客の興奮・熱気・熱狂はわかるけど、観客映すの半分でいいと思う。

せっかくマイケルがカッコイイダンスしてるのに観客ばっかりで気が散る。。。

観客の反応がすごすぎるのがちょっと引くが、

たぶん、40代以上でこういう感想を抱く人は、ごく希だろう。
しかし、20代・10代のひとならもはや、こんなふうに感じて、あたりまえなのかもしれない。ブカレストの観客たちが、なぜこんなに熱狂しているのか、実感を伴って理解できないだろうから・・・


想像してみて欲しい。
北朝鮮で今から3年後に、
こんな感じのライブ・コンサートが開催されて、
こんなふうに観客が熱狂したなら。

熱狂する観客の姿を、あなたは歴史的記録として、映像作品にとどめないだろうか。


知っていて欲しい。
ほんの20年前、世界は”鉄のカーテン”と呼ばれる壁で、ぱっきりと2つに分かれていたことを。
構築されたのは、僕が生まれる1年前。その壁が無くなる日が生きている間に来るなんて、想像も出来なかった。


壁を超えようという意思さえあれば、永遠に思えた壁も、消え去る。
マイケル・ジャクソンは、ひとをへだてる壁を、超えつづけたひとだった・・・とも言えるよね。
人種、政治体制、大人と子供、音楽のジャンル、貧富、文化、主義・・・


まだまだたくさんの壁がある。
壁が崩れることで、別の壁が露わになることもある。
たとえば、ブカレスト
ご紹介した画像で歌われている、ストリートチルドレンの問題は、民主革命のあと深刻化したそうだ。
共産主義政権が無理な人口増加策をとっていた。民主革命後、それが破綻し、10万人以上の孤児(”チャウシェスクの子供たち”と呼ばれています)が発生したそうな。
こんなに静かなバラードで、失神するほど感動する観客が続出するのには、ちゃんと理由があるんだ。


解決しなければいけない課題は、たくさんある。
それでも、ぼくたち人間は、より良い世界を築いてきた。
理不尽に命を終えねばならないひとの数は、60年前よりもぐっと少なくなったはずだ。
明日、全面核戦争で世界が滅びるかも・・・などという心配は、もはやさほどしなくて良い。
環境問題も、核廃絶も、宗教間の対立も、かならず解決できる。ぼくたちひとりひとりが、壁を超え続ければ。



そしてもうひとつ。
ライブを創るのは、エンタテナーだけではない。
マイケルだけを見つめていても、ライブを体感したことにはならない。
マイケルがああ踊り、こう歌ってしまうのは、このブカレストの観客たちが居たからこそ。
たとえば、冒頭のJAM。
メキシコでの公演は、こう。

これも素晴らしいけれど、
ブカレストは、こう。


僕たちは、世界とのかかわりの中で生きている。あなたも、わたしも、観客の一人一人も、マイケルも。
想像力をひろげて欲しい。調べて欲しい。なぜ、あなたに理解できないほど、観客が感動しているのか。
それこそが、壁を超えるスタートなんじゃないだろうか。