一点集中か、網羅&リスク評価か・・・KYTと、労働安全マネジメントシステム

労働安全において、KYT(危険予知トレーニング)という手法が、日本で広く行われています。
小グループで、労働現場でよくありがちな局面の絵を見ながら、

  1. どんな危険が潜んでいるか、思いつく限り、リストアップする
  2. 危険リストの中から、最重要なものをひとつ選ぶ
  3. その対策を、思いつく限り、リストアップする
  4. 最適な対策を、ひとつ選ぶ

「えっ、選ぶのはひとつでいいの?!?」・・・と、講習会で思いました。
講師いわく、いいんだそうです。
意識レベル(労働安全では、確か、6段階ぐらいに分けます)が明瞭な方向にシフトする効果が、大きい。
そして、取り上げるのはひとつだけれど、ほかのリスクも、意識にはのぼっている。・・・とのこと。


なるほど、やってみるとそのとおり。


危険と対策の発見に習熟してくると、非定常作業前などに、日常的に行うようにしていきます。
”思いつく限り”ではなく、3つくらいのリストアップにして。時にはひとりで。
それでも、重要なものを見落とすことはまず無いですし、
やらないのに比べると、ヒヤリとすることがぐっと減ります。



一方で。
ISOの諸マネジメントシステムと整合性をもたせた、OHSASという労働安全マネジメントシステム規格があります。
そのなかで、”リスクアセスメント”というのを行います。

  1. 職場に潜む危険を、ありったけリストアップする。
  2. リスクを、重篤度と発生確率で、評価する。
  3. あるレベル以上のリスクについて、対策を順次とる。


・・・KYTと似てるでしょ?
ただし、決定的な違いがあります。

  • KYTでは、選ぶリスクも、対策も、ひとつ。話し合いで決めます。
  • OHSASのリスクアセスメントでは、全リスクをなるべく客観的指標で評価し、重要なものから順次着手してつぶしていきます。

どちらがいいというのではなく、目的と使われ方がまったく違うんです。

  • KYTは、現場での実作業前に、意識レベルの向上と、重要危害の見落とし防止を目的として行います。だから、手短に、手軽に。3分間で。
  • リスクアセスメントは、経営的取り組みとして、職場全体の安全レベル向上のために、設備や施設に本質的に潜むリスクも含め、網羅的・組織的・継続的取り組みとして行います。だから、みっちり、長期的に。数年・数十年、永続的に進化させていきます。

で。
日本って、KYT的な取り組みは、世界でもトップレベルなほど得意・・・なんじゃないでしょうか。
一方で、OHSAS的な取り組みは、不得手かも。いや、もともとは、日本のQC活動に端を発した手法なんですけれど・・・そして、TQC、QAという形で、経営全体に手法を拡げようという試みがされましたが、大成功とは行かなかった。障害は、”どの部署が主導権をとるの?”みたいな話だったかもしれない、文系と理系との断層のためかもしれない。結局、欧米で、経営どころか政府や国際機関まで巻き込んだシステム規格になり、日本に逆輸入された。


水際対策、マスク、一点集中と、
アメリカCDCの戦略的なふるまいと、
似てませんか?