英語でしゃべらナイト バーンスタインの最後の愛弟子、英語で音を作る

丁度、http://tamura.cocolog-nifty.com/tdr/2004/10/post_1.htmlで書いた日本人の特質と共鳴する話を聴けた。

http://www.nhk.or.jp/night/index.htm
http://www.nhk.or.jp/night/nex-20041018.htm
http://www.nhk.or.jp/night/arc-20041018.htm

50人の候補者から選ばれて、バーンスタインの指導のもと、オーケストラを指揮する。
選ばれたことの重さをしらせる、愛の鞭がとぶ。
英語が出来ないことが判っていて、会食の席で(話し掛けられないように、すみっこに、めだたないように座っていた)「ユタカはどこだ?」・・・いっせいに選ばれなかった人たちの視線が集まる。「課題曲の作曲家について、君が知っていることを語りなさい」・・・「Ah...He...He is a composer.」しーんと静まる会場。運ばれてきたデザートの生クリームをバーンスタインが指で舐めて、「まずい!」ナプキンをバンと叩きつけ、「Party is over! 作曲家のことがわからないんだったら、他の奴に指揮を代わらせる!!!」
その夜、必死で勉強。
翌日。選ばれなかった指揮者たちが見守る中、まず曲のど頭から練習。なかなか揃わない。
バーンスタインが「OK、僕が5cmだけ指揮棒を振る。それでスタートする練習をしよう!」・・・だんだん揃ってくる。「ユタカの指揮は、これよりわかりやすいはずだ。そうだよね!」
裕さんが”バン”と振ると同時に、F1のスタートのように、ぅわーん!!!!!とオーケストラが鳴り響く。以後、その日の練習は最高の出来栄え。
「素晴らしい!!!ユタカは、あの作曲家の全てを知っている!」
・・・そしてこっそり耳打ち。「次はあそこからそこまで、しっかり勉強しておけよ」・・・・・全てお見通し。


あるとき。「能のお面が何種類あるか知っているかい?」・・・そして30分間、バーンスタインは能について語りつづけた。
そして。「いいかい、なるべくゆっくり、握手をしよう。ゆっくりゆっくり手を近づけていって・・・・・」感覚が研ぎ澄まされ、手が触れた瞬間、”バシッ”と電気が走るかのようなエネルギーを感じた。

Energy, concentration, power…
これらを感じることが出来るのは日本人が特別に持っている才能。バーンスタインが得意にしていた作曲家、マーラーのゆっくりした素晴らしい曲"Adagio"という曲のすばらしさと同じだって言ったんです。
僕は、自分が日本人じゃなかったらクラッシック音楽をするのに有利だろうと思っていたし、英語もしゃべれないから萎縮していたけど、彼は僕が日本人に生まれてきたことの素晴らしさ、日本人がヨーロッパ音楽のいいところをどう取り入れて、それをどう人に伝えていくのか?これが大事だと教えてくれた。
(中略)
日本人はかつて外国から入ったカレー粉を日本風にアレンジして、白いご飯の上にかけて『カレーライス』という料理を作りました。その上にカツまでのせてカツカレーを創っちゃう。値段もお手頃で肉まで食べられる。それは日本の定番料理になってしまっている。日本人のそういうところはすごいと思います。だから、僕はクラッシック音楽を『すっごく美味しいカツカレー』にしたいと思っています。

そのカツカレーは、ヨーロッパの人にもきっと刺激的。

素晴らしいハーモニーを創るのに、もっとも大切なことは?との問いに答えて

Tim Hauser (TH): The first thing you have to do is to ask yourself why you're there in the first place.

・・・しびれました。「なぜ、ここに居るのか」を自分にまず問え!わぉ。

http://d.hatena.ne.jp/singspieler/20041019
僕と違う個所をとりあげておられます。

佐渡裕さん
オーケストラを指導しているときに、「そこはもっと長く」とか「短く」という指示だと、単に技術的な指示になる。でも、「そこの音はもっとHumid(蒸し暑い)な音にしてくれ」とか、「そこはもっとBright(明るい)な音に」とか、そういう表現をした方が、面白い音になる。

蒸し暑い、という単語で、みんなが同じことをイメージするわけじゃない。それが面白い。梅雨時のようなじめーっとしたイメージを持つ人もいれば、サウナのような場所をイメージする人もいる。汗がじわっと出てくる感じをイメージする人もいる。みんなが同じイメージを共有するのじゃなくて、そういう色んなイメージが混じり合ってくる瞬間が面白い。

マンハッタントランスファー・素晴らしいハーモニーを創るのに、もっとも大切なことは?との問いに答えて
「大事なのは、それぞれの個性を思い切りぶつけ合いながら、それらをうまく『ブレンド』すること」

違う個性が一つの作品を創るから、素晴らしい。以前書いた2つの記事とつながります・・・。
別々に生きている意味 http://d.hatena.ne.jp/BigLove/20040629
肉体を伴って生きている意味 http://d.hatena.ne.jp/BigLove/20040511